卷頭
協同研究を阻むもの
吉川 春壽
pp.145
発行日 1953年2月15日
Published Date 1953/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905693
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現在では學問の進歩とともにいろいろの方面の研究者が協同して仕事をしなければならない場合が多くなつて來た。そのうちに,單獨の研究者の名前で業績を發表するという樣なことは無意味になつてしまうかも知れない。
こういう趨勢の下にあつて,學位論文のための研究ということが大きな邪魔になることが少くない。それは,ある一つの研究題目について數人が分擔して仕事をしてある研究成績をあげたときに,1人1人の別々の仕事としてバラバラにわけて論文を作成したり,學會で發表したりすることが不可能な内容をもつ場合である。學位請求の主論文はその學位請求者の單獨の名で發表されなくてはならぬという規定があると,協同研究だけを常に行つているような研究者はいつまでたつても學位論文は出來ない。折角その研究者が自分のイデーで,また自分の手で協同研究にたづさわつて,それが大きな成果をあげ得ても協同研究であるがために學位はとれないということになる。
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