特集 農村の保健
農業構造改善の一指標—健康指標の設定とその多面的綜合的活用について
小野寺 伸夫
1
1北上保健所
pp.223-228
発行日 1965年4月15日
Published Date 1965/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203031
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課題解決の前提わが国の農村がまがり角にあることは衆知のことであるが偉大な農村を建設するためには幾多の山積する問題を綜合的に解決してゆくことが重要とされている。開放経済体制に入った今日において世界の農業情勢を検討しつつ日本農業のもつ風土的特徴,資源力,生産性,自給力について考察を深めてゆくことが大切であるばかりでなく国際的位置づけを冷静にみつめる能力開発も必要であると思う。また,わが国経済の成長とともに家族労働を中心に狭少な土地を耕作しつづけてきた農業は他産業との格差を大にし,しかも農村人口の流出,特に若年労働力の農業離脱,中年農業就業者のやとわれ兼業,出稼ぎの増加を基盤とした現代の社会変動は必然的に三ちゃん農業を生み,婦人や老令層の労働強化をもたらし母子保健や疾病構造に由々しい問題を提起している。また生活の面においても都市化傾向を強くする反面,支出の増大,生活様式の変化という大きな変動をもたらしている。かかる社会変動に対処し他産業と均衡のとれた生産性の高い農業とするため経営規模を拡大し機械力畜力を導入し資本の集約的投下をはかろうとする努力は農業基本法の制定とともに大きく展開しようとしている。
併しながら現状においてはかかる農政の努力の成果は遅々としており,その背景には資本力の不足のみならず経済不況が訪れ雇傭条件が変動しても耕地さえあればなんとがなるという意識が,農地の流動を阻止し農業構造改善の足どりの重さを感じさせている。
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