特集 綜合保健活動成立の条件—第22回日本公衆衛生学会総会シンポジウム
主題
綜合保健事業の指標
小倉 襄二
1
1同志社大学
pp.560-567
発行日 1965年10月15日
Published Date 1965/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203126
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.綜合医療保健事業に対する要請
綜合的医療・保健事業のイメージはきわめて不確かで不安定である。どのような構造と内容において展開されるものかという条件の設定も困難である。しかしながら,わが国の医療保障の在り方,それと関連させて,医療制度,公衆衛生の諸施策への討究がなされるときにはこの綜合的医療・保健事業のしくみを考慮することなしには医療問題の要点をとらえることはできそうもない状況である。
たとえば,1959年(昭和34年3月)に医療保障委員会の最終答申が発表されている。この答申における医療のとらえ方は,まず医療が社会的責任において国民に提供されることを前提としている。さらに「医療保障は予防と治療とが渾然一体となって,綜合的に運営され,国民に完全なる保健サービスが約束されて,国民の健康保持増進を図るところにその意義があるといえる」のであり,そのために「国民のすべてに対し,治療給付および予防給付を受け得る機会が均等に与えられるよう国家ないし,社会の責任において給付の提供方法について措置を講じてゆくこと」の必要が輪郭として描かれている。1963年(昭和38年3月)の「医療制度全般についての改善の基本方策に関する答申」においても,綜合的という視点が重視され,医療の概念と領域を「健康の増進から更生医療を中心とした社会復帰(リハビリテーション)まで」を一連の体系とする包括的医療をとりあげている。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.