特集 変貌する農村の社会医学的研究—第6回社会医学研究会・主題報告と総括討議
発題講演
日本農業変貌の実態—農業基本法段階における日本農業
山岡 亮一
1
1京都大学経済学部
pp.614-621
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203138
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I.
戦後20年,この間の日本農業は,農政上からみて2つの重大な時期を通過している。すなわち農地改革の実施と,農業基本法の制定である。農地改革は明治維新以降徐々に形成され確立された寄生地主制を払拭して,過重な小作料負担のくびきを取り去り,小経営ながらも自営の農民を自由に羽ばたきさせるという偉大な仕事をなしとげたのである。農地改革実施の際,農地改革から農業革命というあい言葉がよく語られた。農地改革によって,高率小作料の過重負担をまぬがれた自作農の手による農業革命の道は準備されたが,時あたかも戦後日本資本主義再建の過程にあたり,明治維新当時地租改正を軸として農民の犠牲の下に資本主義発生の本源的蓄積が強行されたのと正に相似の役割を,生れたばかりの自作農が,強制供出その他によって,担わせられ,その後は独占資本の確立とともに,多面的なルートを通じての搾取によって,農業革命の道はとざされる結果となった。ものごとは常にタイミングが大切であるが,日本農業の資本制的発展の芽は,再度その端緒においておしつぶされたのである。
資本制社会においては,農工両部門の生産力は両者を自然のままの発展にゆだねるかぎり,その格差をひらくのみである。これは一つの歴史的必然と考えられる。国家独占資本主義の段階に入った今日,総資本の立場が独占資本によって全面的に代表されるかぎり,この歴史的必然性はその方向をかえることはない。
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