研究報告
疫學的見地より見た百日咳豫防接種についての私見
額田 粲
1
1東京大學公衆衞生學教室
pp.383-384
発行日 1951年6月15日
Published Date 1951/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200860
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1.現行法現6)の批判
1.百日咳の罹患には一次感染即ち幼兒が直接學校或は近隣の患者より感染する場合と二次的家庭内感染即ち兄弟姉妹等の患者から感染する2通りが存在することは多くの調査1)2)3)から知られているが,例外として所謂過密佳地區に於ては地區全體が一家庭と等便であるため,以上兩者を區別することは甚だ困難であり,又無理に區別してもその意味は殆どないものと思われる。
歐米の如く産兒數が少ない國々では百日咳の罹患は主として第一次感染による場合が多く,又その高い生活程度から考えても,隔離その他による家庭内の第二次感染の防止は比較的容易に行われるものと考えられる。これに反してわが國においては,その産兒數から考てえも,家庭内感染の場合は非常に多く,且つ一度子供の1人が罹患すれば,その兄弟中の未罹患者は100%罹患し得る状態にあるのである。歐米にくらべ生活水準の低いわが國においては罹患幼兒の隔離等は云うべくして行われ得ない有様であり,侵襲力の點から考えても家庭内感染は第一次感染にくらべ當然比較にならない程強力である。わが國においては1-2歳の幼兒の百日咳による死亡率は甚だしく高率であるが,これらの大きな部分が二次家庭内感染の結果によるものであることは想像にかたくない。
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