研究と資料
最近に於ける百日咳の豫防—承前
小山 武夫
1
1濟生會乳兒院
pp.193-198
発行日 1948年8月25日
Published Date 1948/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200327
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(三)考察
(i)注射菌量:前述の如く近時多數の學者によつて百日咳免疫の賦與には大量菌注射が推奬されるに至つたが,余等の實驗を以て觀ると,免疫の成立は主として注射菌量の多寡によつて左右される事が明らかである.殊に免疫され難い幼若乳兒でも大量菌を注射すれば直ちに免疫されるに至る上述の所見は,之を明白に立證して居る。大量菌注射が有効な所以は感染發病による免疫の獲得を人工的に模倣するがためで,假令死菌であつても大量注射を行へば,抗體の産生的刺戟となると同時に身體細胞を刺戟變調し,組織免疫を生成せしめるものと想像される。併し比較的少量菌であつても注射方法が適當すれば免疫は高度に生成される。即ち初囘接種で一定菌量を注射して先づ免疫賦與に對して態勢を整え置き,次いで約2ケ月後其の頂期に初囘接種同樣追加接種を行へばよい。余等の百日喉ワクチン使用總菌數は菌量Imgを20億個とすれば,稀薄ワクチンが280億個,濃厚ワクチンが2,400億個である。併し免疫の賦與には個性が與つて力があるから,有効菌量を的確に決定する事は困難であるが,余等は目下最少限所要菌量の決定を研究中である。
斯くの如く百日咳死菌ワクチン大量注射法は免疫獲得上頗る有効な方法であることを確認したが,濃厚ワクチンの皮下注射は後述の如く不愉快な副作用を随伴する。
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