時評
産兒制限と海外移民
岡崎 文規
pp.227
発行日 1951年4月15日
Published Date 1951/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200825
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産兒制限と海外移民とのあいだに密接な關係があるといえば,人は奇異の感をいだくかも知れない。もちろん,産兒制限を實行すれば,必ず海外移民が認められるというのではない。海外移民は,他國の領土へ人を送り込むことであるから,一方的にこれを取り計ろうわけにはいかないのであつて,政治的または外交的折衝に待たなければならない。過剩人口を緩和するための一つの手段として,海外移民の必要を唱えても,海外移民が眞に過剩人口問題の解決に役立つことを緒外國に納得させなければ海外移民について好意的な考慮は拂われないであろう。この意味において,産兒制限の實行は,海外移民を好意的に考慮せしめるための重要な要件であるといわなければならない。
フェヤチャイルド博士は,1945年に,「世界人口移動と合衆國」と題する論稿のなかで,高い出生率をもちつずけている過剩人口國に移民を許しても,移民の送出によつて生じた空席は増加人口をもつてたちまち埋めつくされるから,移民は,その送出國の過剩人口問題の解決には全く役立たないのであつて,その受入れ國にとつて,國内的に面倒な問題をひき起すにすぎないといつている。
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