研究と資料
日本腦炎の虱及蠅の傳播實驗
北岡 正見
1
,
三浦 悌二
1
,
中村 能子
1
1豫防衞生研究所
pp.290-295
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200440
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日本腦炎は吸血双翅昆虫殊に蚊によつて傳播されるであらうと最初に唱えたのは三田村,山田(1)である。當時(昭和8年)この蚊傳播説は流行病學的諸事項並に衞生昆虫學的調査から推論されたのみで實験的根據が缺けていたため世の激しい批判をうけた。然し昭10和年日本腦炎病毒が我が國の多くの學者によつて,マウスを用い分離されるに及んで,脳炎の感染經路についても廣汎な實驗が進められた。そして日本腦炎の蚊傳播説は今日では揺ぎない實驗的基礎の上に築き上げられたのである。三田村(2)は蚊以外の吸血昆虫による腦炎の傳播は流行病學的諸事項から容認することが出來ないと指摘した。然し蚊以外の吸血昆虫,或は夏季に出現する昆虫については一應實験的に檢討の必要がある。先づ我々の實驗の對象として取り擧げたものは非衞生的な生活條件の下で繁殖する。發疹チフス或は再歸熱を傳播する虱(Pediculus vestimenti)と,近時小兒麻痺病毒(Francis(3)-Sabin)(4)の傳播者として問題となつているイエバエ(Musca domestica)である。
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