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日本腦炎について
北岡 正見
1
1国立予防衞生研究所リケツチヤウイルス部
pp.10-16
発行日 1955年8月15日
Published Date 1955/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201582
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夏が近づくと毎年,今年は脳炎が流行しますかと,人から尋ねられる。そうしてその都度,当惑している。というのは流行が起るとか,起らないとかの未来の出来事に対する答えは,第六感による主観的決定によつてするのではなく,過去に於ける疫学を,出来得る限り客観的に各因子に分析し,綜合し,そこに何らかの手懸りを見出そうとの努力が,今日でも,なお続けられているにも拘らず,残念乍ら未だ決定的な法則が見出されていないからである。
しかし過去に於ける全国的大流行の年次発生を通覧すると,そこに凡そ10〜15年の周期的流行波が認められる。また今日迄に明らかにされたことは日本脳炎も他の伝染病に於けると同様に個体の免疫と体内に侵入するウイルス毒力のかね合いによつて,発症したり,しなかつたりしている。近年の流行も昭和23年の全国大流行の連続であることを考慮すれば,そして今年の気象的条件が例年並みであるとすれば,今年の患者発生数が少くなつていつてもよい筈である。今その理由を述べるに先立ち日本脳炎の輪廓に触れてみよう。
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