研究と資料
極東各地に於ける日本腦炎の地理的分布について
三田村 志郞
1
,
北岡 正見
2
,
三浦 悌二
2
1傳染病研究所
2豫防衞生研究所
pp.197-203
発行日 1949年2月25日
Published Date 1949/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200422
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我が國に於ける腦炎の歴史は古い(柿沼1)三田村2))。しかし我が國の多くの學者が腦炎に對し注目し始め,多くの臨床報告や實験を行つたのは,1917年歐洲に於てEconomoが嗜眠性腦炎に關する輝しい業績を發表して以來の事である。しかし腦炎の各分野に亙り,廣範圍な本格的の研究の始められたのは1933年以後である。即ち1933年日本學術振興會内に設置された稻田龍吉先生を委員長とする第三(腦炎)小委員會の各委員竝に委員會に屬していない多くの研究者逹の渾身の努力によつて日本腦炎の研究は長足の進歩を遂げた。其のうち病原體に關しては,1933年の流行に於て先ず岡山醫大の林3)が猿えの移植實験に成功し.次の流行(1935年)に於て各研究者逹はそれぞれ各地(福岡,岡山,兵庫,大阪,京都,新潟,東京)に於てマウスを用いて病毒分離に成功した。かつ日本腦炎は獨自性のものであり,セントルイス腦炎及びその他の既知の腦炎と異る病であることが明らかとなつた(川村,4)三田村,5)高木,6))。因みに日本腦炎病毒は株相互の間に於てその抗原構造に於て多少の差異が認められるとしても,今日までに我が國で識られている唯一の病毒株である(三田村2))。
さて日本腦炎は極東各地に於ていかなる程度と瀕度に散布されているものであろうか。この答は唯に學問的興味に止らず,本病の防疫對策を樹立する上にも極めて重要なことである。
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