特集 第2囘日本公衆衞生學會演題
午後の部
(36)硫酸及び過燐酸石灰製造工場に於ける豫防醫學的研究
岡田 博
1
,
榎本 敏雄
1
,
舘野 眞
1
,
須永 寬
1
,
不破 博德
1
1名古屋大學豫防醫學教室
pp.168-170
発行日 1949年1月25日
Published Date 1949/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200418
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(1)環境醫學的に先づ問題となるのは過燐酸工場の全工程と硫酸工場の半部に於ける發塵であつて,塵埃濃度は概ね1cc中800の危險度以上で粒子の大きさは5μ以下が90%を占める。次に硫酸工場の後半部に於ける亞硫酸瓦斯の漏出も問題である。又同工場の焙燒爐側路の上中段の副射熱も問題となるが其處えは稀れにしか工員は登らない。原料である硫化鑛の中にはSiO2は6%弱含まれているが燐鑛石の中にはない。
(2)障碍として目立つのは,過燐酸工場に於ける所謂塵肺と硫酸工場の慢性氣管支炎樣症状である。塵肺は過燐酸工場では61%で硫酸工場の前半部にも11%に見られるが,共に強度のは甚だ少ない。慢性氣管支炎は硫酸工場では22%ある。塵肺と結核症との合併は過燐酸工場に1名のみ。又結核症も特に多くはない。唯過燐酸工場に心臓異常が4.8%にある。塵肺度と肺活量及赤沈値には著るしい相關關係を見ない。自覺症状としては兩工場共疲れが特に目立ち硫酸工場ではせき,たんを始め呼吸器粘膜の刺戟症状が著るしい。輕度の塵肺の出現や慢性氣管支炎症状は概ね2年程で著るしくなり,此頃に可成りの工員が辭め所謂陶汰現象を示す樣である。血液所見としてい兩工場共病的顆粒(Momsen染色)が20-30%を示し,且輕度の貧血と血清比重(硫酸銅法)の平均0.0021の低下がある。尿のUrobilinogenは約60%に陽性を示す。
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