論述
感冒の豫防に就て—殊にインフルエンザ豫防
小島 三郎
pp.208-213
発行日 1946年12月25日
Published Date 1946/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200077
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1.風邪,熱性炎,流感
秋の晩くなる頃から冬に,冬から初春に亙り,國民のどの位の割合で,感冒に罹るか。我國に於ける統計觀察の精確なる資料としては,公表せられたものが見當らない。米英あたりの學校工場の例が報告に散見する。普通の生活者は2年間に3囘罹患して,休業臥床すること9日位に及ぶ割合だとある。個人家庭への不幸と經濟的負擔,産業,教育等に及ぼす障碍なども調査したものがある。本稿は此種の記述を省略する。
俗間の鼻カゼ,ノドカゼ,から「はやりかぜ」迄の一組の上氣道を舞臺とする輕症のもの,呼吸器系全般を犯す重症のもの迄の各種炎性疾患のすべてを,感冒と一先づ名付けやう。鼻炎,咽頭喉頭炎,氣管支炎,アンギナ,扁桃腺炎等も含めて,又たかのCommon Cold と一括せられるもの及びInfiurnza流行性感冒,これを散發性,流行性,汎流行性に分けて考へても,A型B型乃至y型に分けても,ともかくも一切の「カゼ系」疾患を含めて,私はその豫防を説きたい。此種の疾患程豫防努力が覿面に報いられるものはない。此種の疾患程,肺炎に發展し,結核を續發し,國民の生命を脅かす基始病の役をつとめるものも他にはない。
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