特集 出生前診断
胎児心臓病の出生前診断と治療
松井 彦郎
1
1長野県立こども病院小児集中治療科
pp.153-157
発行日 2014年3月15日
Published Date 2014/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102962
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先天性心疾患の出生前診断の概要
わが国において,長年胎児に関する診療は公的な医療として認められてこなかった.欧米では“胎児は患者”ということが一般化しているにもかかわらず,日本では法的に,人間は“出生時より”ヒトとして認められ,“出生前の胎児”はヒトとしての治療対象とはなっていないことに起因すると考えられる.一方,医療技術においては,欧米の発展に遅れることなく,先天奇形症候群や先天的機能異常の遺伝的検索や画像検索が時代とともに進歩する中で,出生前に“胎児を診断する”さまざまな方法が進歩し,その必要性が議論されることで出生前診断は社会的に普及してきた.
先天性心疾患に関する出生前診断は,1980年代から欧米で盛んになり,その有用性が示されてきた1).これは遺伝子的な検査ではなく超音波画像による心形態および心機能診断であり,出生後早期に全身状態が悪化する可能性のある先天性心疾患や不整脈を検出し,疾病の予後を改善することが主たる目的であった.遅れることなく日本でもその重要性が認識され,全国各地で胎児心臓病に対する診断技術が磨かれてきた.
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