特集 出生前診断
出生前診断の現状―進歩と課題
澤井 英明
1
1兵庫医科大学産科婦人科学
pp.146-152
発行日 2014年3月15日
Published Date 2014/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102961
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はじめに
出生前診断とは,妊娠中の胎児が何らかの疾患に罹患しているかどうかを検査して診断することである.その本来の目的は,あらかじめ出生前に診断をしておくことで,生まれた児の健康の向上や,適切な療育環境を提供することである1).しかし,妊娠初期~中期の母体保護法の定める人工妊娠中絶の可能な時期(現在は妊娠22週未満)に実施されて,胎児の疾患が重篤と診断された場合には,生まれてきても重度の障害が避けられないことも多く,そうした児の出生を避けるために,妊娠継続自体を断念するということがありうる.そのため医学的にも社会的および倫理的にも留意すべき多くの課題があるとされている1).そして2011年から米国で始まった母体血中胎児DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査が,日本でも2013年から始まったことで,マスコミ報道などが過熱し,上記の倫理的な課題も改めて注目される事態となっている.
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