Medical Scope
胎児母体間輸血症候群の出生前診断
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.85
発行日 1984年1月25日
Published Date 1984/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206390
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胎児母体間輸血症候群feto-maternal transfusion syndromeという名前を諸君は耳にしたことがあるでしょう。これは経胎盤出血transplacentalhemorrhageともいわれている妊娠中の出来事ですが,何らかの原因によって胎盤中の絨毛が破たんし,胎児血が母体の絨毛間腔に流出し,胎児は貧血になり,ひどいときに死亡するアクシデントです。よく研究がすすんできた今日では,この経胎盤出血は分娩例の約50%,つまり半数に程度の差はあるものの発生していることがわかっています。しかし,多くの場合,これは程度が軽く,つまり,胎児側の出血量が少ないので何の影響もないのですが,これが40ml以上の出血となると胎児も相当の貧血になるので,まれには死亡例も出てくるのです。
このように40ml以上も出血する症例は全分娩例の約10,すなわち,100例に1例の割合ということですが,私たちが臨床でみているうちに原因がわからないで胎児死亡に至ってしまった症例に,この経胎盤出血,つまり胎児母体間輸血症候群が数多く含まれていることはいうまでもありません。そこで,妊娠中での診断ということが大切になってくるのです。
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