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日本看護倫理学会第4回年次大会 会長講演
出生前診断の倫理的課題と看護
Prenatal diagnosis encompasses ethical, legal, and social issues (ELSI) in nursing practice
安藤 広子
1
1岩手県立大学 看護学部
pp.59
発行日 2012年2月25日
Published Date 2012/2/25
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- Abstract 文献概要
生殖医療技術の発展は、出生前診断という検査・診断学を先端医療として導き、さらに出生前診断技術の開発・応用は、胎児治療を含めた新たな展開へと発展していくものと思われます。出生前診断は、母体が安全に妊娠・出産を経験できると同時に、児の健康の向上・児の適切な養育環境を提供することが目的とされています。しかし、出生前の検査による「診断」が「治療」よりも優位に先行していることや、妊婦の「自己決定権」と「胎児の権利」との葛藤、非確定検査(スクリーニング検査)の確率値の認識や、画像検査におけるソフトマーカー等への対応の困難さを包含しています。このように、出生前診断は「命の選別」という行為の可能性や、女性のもつ生物学的個体差に対する社会からの価値観の影響を受けやすい状況を作り出したとも言えます。
出生前診断は倫理的・法的・社会的問題(Ethical・Legal・Social Issues)を孕んでいることは明らかであり、そのことに配慮した「出生前診断に関する見解」が幾つか提示されてきました。そして、近年の胎児診断技術の進歩と社会情勢の変化に伴い、に日本医学会から「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2011年2月)が提示されました。そこには、スクリーニングと診断検査との違い、検査希望の確認、検査のメリットおよびデメリット・限界の明確化、子どものもつ先天的・後天的なリスクの可能性、子どもの成長発達の個別性、検査対象となる病気に関する最新の情報提供、専門職種から成るチームメンバーによる遺伝カウンセリングの実施などが記述されています。
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