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はじめに
受精卵診断(着床前診断,preimplantation genetic diagnosis : PGD)は,1990年Handyside博士ら1)によって,単一遺伝子疾患の回避を目的として(X連鎖性遺伝性疾患)報告された.以来,生殖医学,臨床遺伝学の分野における技術(主に分子生物学的技術)は飛躍的に進歩を遂げた結果,対象は急速に拡大した.同時に診断精度も向上した.しかし一方では,いくつかの課題が浮き彫りになってきており,今後十分な検討が不可欠であることが指摘されている.ここで課題を挙げると,(1)倫理的側面(個人・社会的),(2)技術面(全ゲノム解析),(3)診断対象〔成人発症型遺伝病・家族性腫瘍・低浸透率の優性遺伝病,染色体スクリーニング=(PGD─aneuployd screening : PGS)など〕,(4)Epigeneticの問題,(5)PGD後の産科的について,検討されるべきである.現在の,全世界的な,その実施数・詳細についての把握は大変難しいが,総括的な報告としてESHRE(European society of human reproduction and embryology : 欧州生殖医学会)の報告であるESHRE PGD consortium dataが参考となる.2007年,最新のdataVI2)が報告された.また,PGDを精力的に施行している大規模施設では,これまでのデータをESHREやASRM(American society for reproductive medicine : 米国生殖医学会)などの学術集会で報告している.ここでは,PGDの概要に触れ,最近注目されている課題を中心に解説する.
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