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はじめに
医療の安全性についての基本的考えは同じであるが,個人病院から特定機能病院まで規模に応じて職員の感じ方や取られるべき対策も異なる.特定機能病院に共通する特徴を医療機関側と患者側に分けると,病床数や診療科が多く,職種が細分化され,多くの専門知識を持った職員が勤務している,という医療機関側の要素と,合併症の存在や前治療歴など複雑な疾患背景を有し,医療機関に対する期待も高い,という患者側の要素が挙げられる.
これらと医療安全管理上の問題との関連を考えると,医療者側の要素として,①職種や職員数が増加するほど意思の統一が困難になりテリトリー意識が強くなる,②専門性が高くなるほど行為の妥当性評価が困難になり,専門家に対する気づきの発信が低下する,③多彩な目標設定のため安全対策への参加意識の継続が困難になる,④患者に対して多くの関係者が協働する必要があるためヒューマンエラーの確立が高くなることがあげられる.一方,患者側の要素としては,①要求が過大で治療が奏効するという予想を抱いている,②合併症や基礎疾患など背景が複雑である,③既に多くの医師が関与している,④安全対策はすべて備わっており,安全管理はすべて医療機関が行うべきものである,という誤解を抱いている.
本稿では東京都港区に存在する東京慈恵会医科大学附属病院本院で医療安全対策を行っている者として,多種多様な部門が緊密に連携して医療を行っている特定機能病院の現場で取り組んでいる当院の医療安全推進対策を,医療安全推進室の役割,他職種との連携,院内メディエーターの育成,ヒューマンエラー対策としてのチームステップス(TeamSTEPPS®)の活用といった面から紹介する.
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