特集 医療安全のさらなる推進に向けて
医療安全管理における看護職の役割と地域連携の推進
杉山 良子
1,2
1パナマウントベッド(株)技術本部
2前・日本赤十字社事業局医療事業部医療安全課
pp.531-534
発行日 2013年7月15日
Published Date 2013/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102782
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はじめに
日本における医療安全元年といわれる1999年に発生した医療事故を発端に,医療安全推進活動が目に見える形で展開されてきた.それまでも,同様の医療事故はあったが,医療事故そのものに対する考え方は当事者の責任追及を中心とした偏狭なものであった.医療界自体が,それに異を唱える状況にはなかった.
そうした中,1990年代半ば頃より,看護が率先してインシデントレポートを収集する活動を始めた.看護がけん引していくことで医療安全活動が推進されていったといっても過言ではなく,それにはそれだけの背景と理由が存在したと思う.加えて,1999年,2000年にメディアが大きく取り上げ社会問題化した医療事故の直接的な当事者は,いずれも看護師たちであったことを忘れてはならない.看護師たちが支えてきた病院医療の狭間で起きた,不幸な事故の数々であった.
それから十数年を経て,医療事故は医療の質との関連で取り扱われるようになってきている.現在では,良質な医療を提供していくために,という命題の下に医療安全の取り組み内容が法制化され,またチーム医療における医療者の専門性を前提とし,互いに連携・補完し合うことでの,安全性の確保が強調されるようになってきた.現状ではまだまだ不足な点は多いものの,確実に医療安全は推進され,浸透してきたことは否めない.
この稿では主として,病院において職員の大多数を占め,常に患者の身近で業務をしている看護師の安全への取り組みや役割,さらに安全管理としてのなすべきことについて,筆者の体験や実践を踏まえて論じてみたい.
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