予防と臨床のはざまで
第20回ヘルスプロモーション・健康教育国際会議ダイジェスト(その3)
福田 洋
1
1順天堂大学医学部総合診療科
pp.1053-1054
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101987
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今回は,「第20回ヘルスプロモーション・健康教育国際会議」(IUHPE)2~5日目の概要をお伝えしたいと思います.2日目以降は毎朝1つの基調講演,午後に準基調講演というプログラムでした.毎朝の基調講演前には,“Take Care of Earth”と銘打って,大きな地球儀の風船を,会場全体でトスし合うイベントが行われました.2日目のテーマは「地域移動・都市化と健康」で,健康的な街づくり(ヘルシーシティ)の話題が取り上げられました.最も注目を集めていたのは,リトルシンガポールと呼ばれるマルキナ市(フィリピン)のMaria市長による発表で,20年前は舗装道路が1本しかない街から,ジュリアーニ市長の壊れ窓理論や河原のサイドウォーク,自転車道路,河原の不法住居の改善,植樹などを通じ,街づくりを通じていかに人々の健康が増進できたかが報告されました.
3日目のテーマは「社会・文化の変化と健康」.ここでも話題になっていたのはWHOの健康の社会的規定要因です.インドのMaria Chatterjee医師からは,最底辺の女性のための労働組合であるSEWA(自営女性労働者協会)の活動が紹介され,女性が安心して預金できるSEWA銀行,健康生協,女子のための学校,スラム街の生活改善などの活動を通じて,女性の人権が改善し,次に健康や健康情報を求める.このような女性のエンパワーメントを通じて,健康へのインパクトが増していった様子が,多くの写真とともに語られました.座長Bleddmann氏の「ヘルスプロモーションは社会構造の変化により起こるものでなく,社会構造をドライブすべきもの」という言葉が印象的でした.
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