連載 路上の人々・10
崩れる心
宮下 忠子
pp.895
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101934
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「私ねぇ,ちゃんとした暮らしをしたいと思っているのよ.ほんとよ.でもさぁ,この体じゃ,それに,70歳を越しては,どうしょうもないのよ.どうしたらいいの?」
彼女は,多少上目使いに私に視線を合わせ,おちょぼ口から哀願調で言う.公園の垣根の隙間にダンボールを敷き,崩れるようにしゃがみこんでいる.失禁しているのか,下半身の一部が濡れてダンボールも変色し,その横に焼酎のワンカップの空瓶が転がっている.
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