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あとがき
西田 茂樹
pp.762
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101411
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以前,死亡率の研究をしていた頃,集団の死亡率あるいは平均寿命は何によって決定されるかについて考えていました.そして,死亡率を決めるのは,突き詰めたところ,集団の中の貧困者の割合,それも相対的な貧困者の割合ではなく,一定水準以下の所得の貧困者の割合ではないかと推測していました.すなわち,食べられるか,食べられないかの貧困水準が決定要因ではないかと考えていました.現在のわが国の平均寿命は世界最高水準です.しかし,わが国に貧困が蔓延していく現状を見ると,遠からず,世界最高から脱落するような気がしています.
今回は貧困の特集を企画してみました.貧困と健康は公衆衛生にとって基本的な問題です.しかし,今回の特集を読んで,われわれ公衆衛生従事者には貧困問題を根本的に解決することはできないと改めて感じました.また生活困窮者の健康問題に公衆衛生として何ができるか,考え込んでしまいました.
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