特集 超高齢社会の地域医療制度の展望
超高齢社会における医師会の役割と展望
唐澤 祥人
1
1日本医師会
pp.894-899
発行日 2007年11月15日
Published Date 2007/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101181
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はじめに
高齢化は世界的傾向と言われている.わが国が超高齢社会という理由は,高齢者の増加数が顕著であることに加え少子化がまた著しいため,必然的に高齢社会が加速度的に進展することによる.
わが国は,米国に次ぐ世界第2位の国民総生産(GDP)を維持している.これらは,終戦後の廃墟から立ち上がり,高度成長を続けてきた成果と,たゆまぬ産業の創意工夫や効率化などの賜物であろう.一方,物流や交通,情報の迅速化や拡大によって,家庭と地域の生活環境は大きく変貌したと言える.たとえば,女性が従来の家庭内生活環境から社会一般の就労活動へと進展してきたこと,食生活と公衆衛生環境の改善や医学・医療の進歩によって,旧来の感染症など多くの疾患が克服され,健康的で安全な社会環境が築かれるようになったことである.そのような環境の中,家庭では,長時間の勤労などにより親の帰宅の時間が遅く,それぞれの家族の不在時間が長くなり,子どもが取り残されるようになった.近年は複数世代の同居家庭が激減し,多くの高齢者は地域的に日常生活の場はあっても,若年世代と居住を隔てることとなった.その結果,高齢者の独居世帯,老老世帯の増加が著しくなり,各地の自然災害などでは,真っ先にこのような高齢者が悲惨な被災者となっている.
このように子どもや高齢者は地域社会で厚遇されているわけではない.わが国が経済大国として,冠たる地位を築いてくる間に,大切なものを置き忘れてきたことに,ようやく今気づきつつある.
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