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あとがき
阿彦 忠之
pp.86
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101065
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2007年の『公衆衛生』誌は,「がん対策」で幕開けです.幅広い対策を含み,新たな法制度のもとで大きな進展が期待される分野ですので,来月号を含めて2回にわたる特集となります.今回は,本年4月から施行の「がん対策基本法」の趣旨と関連施策,基本法で重視している患者の視点からの活動の一端,およびがんの1次予防に関する最新の情報などについて,国内の第一人者の方々から解説と提言をいただきました.地方行政で仕事をする者にとっては,今後の実務の参考になる論文ばかりです.
特集論文の中でも繰り返し紹介されていますが,かつての日本で最も多いがんは「胃がん」でした.しかし,この半世紀のうちに胃がんは大きく減少しました.胃がん死亡率の減少要因と各要因の貢献度について,大学の講義で医学・看護学生に毎年質問しておりますが,ほぼ例外なく,(1)胃検診の普及による早期発見の効果,(2)手術等の治療技術の進歩,(3)食生活の変化(減塩など)の3つが回答され,貢献度は(1)>(2)>(3)と答える学生が多いのが実情です.実際は1次予防(→罹患率の減少)の貢献度が最も大きく,それを促進する環境面(冷蔵庫の普及等)の貢献も大きいことを伝えていますが,これを証明するには「地域がん登録」による罹患率の分析が不可欠です.がん登録に関する早期の法制化が望まれるところです.
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