視点
公衆衛生の人づくりと行動科学の視点
川上 憲人
1
1岡山大学大学院医歯学総合研究科衛生学・予防医学分野
pp.2-3
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100786
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“公衆衛生の人づくり”というお題をいただいて寄稿させていただくことになった.筆者が公衆衛生に一歩を踏み出して20年.公衆衛生の広大な研究・実践領域のごく一部にかかわり,また衛生学・公衆衛生学の教育者としての自覚を持ったのもごく最近の話であり,ごく限定された経験に基づいた私見となることはお断りしておきたい.ここでは,“公衆衛生の人づくり”における行動科学という要素の大切さについて述べてみたい.
公衆衛生の基礎技術としての行動科学
疫学研究によってがん,脳血管疾患,虚血性心疾患などの主要な慢性疾患に対して,どのような生活習慣がどの程度の影響を与えるかが明らかになってきた.しかし疫学研究の成果が疾病のコントロールにつながるためには,人々の生活習慣を変容するための手段が必要になる.生活習慣を変えたいとすでに動機づけのある人々を支援することだけを考えてみても,知識の伝達を中心とした健康教育では困難であることは,多くの公衆衛生従事者が経験しているところである.
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