視点
公衆衛生の人づくり―バットを振らなければ場外ホームランは打てない
中村 好一
1
1自治医科大学公衆衛生学
pp.328-329
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100867
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未だに未熟な身でありながら,人を育てる立場に立たされ,このような文章を書いている.結局は自分の経験に基づいたものしか書けない.したがって自分がどのように育てられたのか(決して育てた側の期待どおりではないが),ということが中心にならざるを得ないと居直り,しばし思うことを綴ってみよう.
統計学の教科書
1986年に研修と称して1年間,現在の教室で遊んでいた私に,当時の柳川洋教授(現埼玉県立大学学長)から与えられた仕事の一つが,近所の保健師養成施設での統計学の講義であった.学校で渡された教科書が分厚くて難解で,とても使い物になる代物ではなかった.医局で「誰か初心者向けに統計学の教科書を書く人はいませんかねぇ」と言うと,柳川先生は「そんなものは自分で書くのです」と言い,それをきっかけにして生まれたのが『ヘルスサイエンスのための基本統計学』(南山堂)である.この本は刊行して15年が経過し,若干の改訂も行ったが,基本的な部分は相変わらず現役として通用している.なお,「自分で書け」という精神が骨の髄までしみこんでいることは,『基礎から学ぶ楽しい疫学』(医学書院)の前書きで述べた.
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