視点
公衆衛生の人づくり―ピッツバーグ大学公衆衛生大学院での経験
竹下 達也
1
1和歌山県立医科大学公衆衛生学
pp.86-87
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100805
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「公衆衛生の人づくり」のテーマで頭に浮かぶのは,私自身が20年近く前に留学した米国ピッツバーグ大学公衆衛生大学院(以下GSPH)の修士課程での経験である.臨床研修終了後すぐに留学したので,疫学,統計学などの社会医学の方法論を基礎からGSPHで学ぶことになった.私は臨床研修での老人内科,特に消化器科での経験から,がん対策には予防しかないと考え,予防医学専攻を選択した人間である.当時,がんというと,環境発がん物質の染色体傷害研究が華やかなりし時代で,GSPHでは変異原性物質によるマウス染色体傷害に関する研究チームに加わった.
当時GSPHは,生物統計学,疫学,保健管理学,産業環境保健学,放射線健康管理学,人類遺伝学,栄養学の大講座に分かれていた.もともとピッツバーグは鉄鋼の町であり,GSPHにおいても1948年の設立以来,産業環境保健学が重視されていた.産業環境保健学について特筆すべき点は,修士課程の多くの講義が平日の夕方と土曜日に行われており,働きながら学べるコースであったことである.社会人の学生は産業現場をよく知っており,現場の問題をそのまま講師にぶつけていたのが印象的であった.また,人類遺伝学講座は,遺伝カウンセラーの専門職養成コースを1971年に米国で2番目に開設して現在に至っている.
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