視点
公衆衛生の人づくり―傍から見ていると
中堀 豊
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1徳島大学大学院医学研究科プロテオミクス医科学専攻分子予防医学分野(公衆衛生学)
pp.808-809
発行日 2003年11月1日
Published Date 2003/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100970
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公衆衛生学の教授になって6年,授業もこなし,社会活動もそれなりに行っているから,よその公衆衛生の教室に勝るとまでいかなくても,負けているとは思わない.私は研究としては人類遺伝学からスタートしており,扱う対象はヒトであるが,培ってきた視点と方法論はいわゆる社会医学とは少々異なるから,本流ではないと自覚している.他覚的な根拠もある.科学研究費の申請は教室から出す半分は衛生か公衆衛生・健康科学に出しているが,この2領域で研究費をいただけたことは未だにない.この2年続けて大学設置審査を受けたが,昨年など「社会医学」の修士課程教官としてマル合をいただけなかった.このような私であるが,気になることをいくつか述べさせていただく.
公衆衛生は科学か?
C.E.A. Winslowの「Public health is the science and art of preventing disease, prolonging」から,公衆衛生の両面が読み取れる.一方では公衆衛生を科学とし,一方で科学でない面も認めている.ここでいうart(技術)にpolitics(政治)が入るのかどうか難しいが,artを行うためには必要なことなのかもしれない.欧米では公衆衛生が立派な科学であることは,Master of Public Healthに留学された先生方が,「目覚めた」とよく書かれていることからもわかる.問題は,日本での公衆衛生が,他分野の研究者や医学生にどのように見えているかということである.「臨床も基礎もできない,ちょっと変わった人が行くところ」と思われている節がある.いずれにせよ,あまり科学的だと認めてもらっていない.
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