連載 21世紀の主役たち・5
大人に媚びない子どもたち(ヒマラヤ・サルダン村)
関野 吉晴
1
1武蔵野美術大学
pp.573
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100624
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チベット高原に近い,ヒマラヤ奥地に4か月滞在した.サルダンという村では村を一望できる高台に大きなテントを張った.テントを張った場所は隣村に行く者,ヤクやヤギ,ヒツジの放牧に行く者,燃料の薪やヤク糞を集めに行く者の通り道になっている.毎朝テントの横を通る10歳ほどの男の子がいた.歌を歌いながらニコニコして通り過ぎていく.彼はいつも仕事を持っている.家畜の放牧かヤク糞拾いが彼の仕事だ.自分の家の用事ではなく,近くの家でバイトを頼まれるのだ.
バイトが終わるとご褒美に,ソバ粉で作った砂糖の入っていないパンケーキや,麦焦がしのような麦を炒って粉にしたツァンパをもらう.スポーツドリンクをあげると,本当に嬉しそうな表情をして,ちびりちびり飲んでいた.
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