連載 21世紀の主役たち・9
ヒマラヤの子どもたち(ネパール)
関野 吉晴
1
1武蔵野美術大学
pp.917
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100703
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ネパール西北部の北ドルポの住民は,畑で大麦,小麦,ソバを作り,ヤク,ヤギ,ヒツジを飼育している.しかし灌漑用水が足りないため,裕福な家でも畑の収穫物だけでは半年分の農作物しか得られない.それを補っているのが塩の交易だ.
晩秋の11月中旬,チベットから運んで来た塩をヤクの背に載せる.年寄りや小さな子どもとその母親,村のほとんどのヤクが村を出る.ヤクの背に塩を載せ,およそ半月間かかる大キャラバンだ.5,000 m以上の峠を3つも越えなければならない.10歳に満たない子どもたちも同行し,水汲み,薪集めなど,能力に応じて仕事を手伝う.雪を抱いた山々を越え,標高が低くなると森が現れる.目的地は暖かい南のヒンズー教圏.そこに塩を運び,トウモロコシと交換する.その差益によって1年間食いつなぐことができるのだ.
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