連載 感染症実地疫学・8
市中におけるSalmonella Enteritidis感染症集団発生―長い潜伏期が問題となった事例
松井 珠乃
1
1国立感染症研究所感染症情報センター
pp.621-624
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100625
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日本においてサルモネラは食中毒を起こす主要な病原体であり,血清型としては,Salmonella Enteritidis(以下SE)が多く分離される傾向にある1).また,SEによる集団食中毒においては,原因食品に鶏卵が使用されている事例が多いが,乾燥に強い菌の性状から環境に残存したSEによる食品の二次汚染も,重要な発生要因の1つと考えられている1).サルモネラ症の潜伏期は6~48時間,通常12時間と言われている2).
2001年に発生したSE感染症の集団発生事例について,以下に,われわれFETP(Field Epidemiology Training Program:実地疫学専門家養成コース)が通常行っている,集団発生調査の際の基本ステップに沿った形式で,事例調査の主要部分について解説してみたい.この事例については,最終的には症例のうち最も多くを占めた集団については原因が判明したが,潜伏期が3~16日(中央値8日)と極めて長いものであったことも調査が難しかった1つの理由であった.なお,事例の詳細,事後の対応については,参考文献3~6)に掲載されているのであわせてご参照いただきたい.
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