連載 公衆衛生ドキュメント―「生きる」とは何か・23
―水俣病から50年⑤―漁師の頭領「網元」,10年の闘病
桑原 史成
pp.86
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100243
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息子の漁師が水俣病に見舞われ,1960(昭和35)年に水俣市立病院で他界した.その死の直後に父の網元も水俣病に冒されて,息子が入院していた同じ病室の同じベッドに横たわっていた.
掲載の写真は10年後の1970年に撮影したものだが,硬直した手は水俣病の症状を象徴するかのように,より変形していた.老いた網元は回復することなく,息子の後を追うことになった.この病室のモルタルの壁には,息子が死の直前に苦しみもがいた断未魔の傷跡が,その後も残っていた.
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