連載 公衆衛生ドキュメント―「生きる」とは何か・20
―水俣病から50年②―水俣病との出会い
桑原 史成
pp.862
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100188
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私が「水俣」と関わることになった経緯を,今回述べさせていただく.1960年,社会に出て間もない春のこと,1冊の『週刊朝日』(1960年5月15日号)との遭遇から始まる.それは,「水俣病を見よ」と題した特集のルポ記事で,私はむさぼりつくようにしてそれを読んだ.
そこには,水俣病が公式に確認されてから4年が経過し,不知火海沿岸の漁民たちは業病に侵され,短期間に死亡した患者や,市立病院に“収容”された人たちの実情が記されていた.私は活字を追うに従って,体の中に熱い戦慄が激しく走るのを覚えた.日本の近代化と経済の急速な成長下で起きた歪みであると確信した.
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