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Anesthesiology
Editorial:
Dutton RP. Elective anesthesia is really, really safe. Anesthesiology 2025;143:9-11.
Article:
Epstein RH, Dexter F, Fahy BG. Inpatient postoperative mortality:comparing patients hospitalized preoperatively to those having elective surgery. Anesthesiology 2025;143:62-70.
■麻酔関連死亡研究の歴史
Mortonは,1846年10月16日にマサチューセッツ総合病院(MGH)でエーテルによる全身麻酔を行った。全身麻酔はその後,急速に全世界に広がった。麻酔の普及と同時に麻酔関連死亡などの事故が報告されるようになった。1848年1月には,英国でクロロホルム麻酔中における死亡事故が報告されている。Snowは1858年に,クロロホルム麻酔により死亡した50例について報告している。当時のクロロホルム麻酔による死亡率は約3000例に1例程度であったと推測されている。ハーバード大学のBeecherとToddは,5年間で59万9548例の麻酔症例を対象とした麻酔の安全に関するランドマーク的研究を1954年に発表した。麻酔関連死亡と判断されたものは1:2680であった。1970年代の麻酔による致死的麻酔関連死亡事故は1〜2:1万例とされた。現在の麻酔関連死亡は1:1万〜10万程度にまで低下したとされている。Lagasseは,ASA PSⅠ〜Ⅱの患者にとっても麻酔は完全に安全というわけではなく,より重症な患者ではさらにリスクが高いと述べている(Lagasse RS. Anesthesiology 2002;97:1609-17)。麻酔後の死亡者数は世界的な死因の第3位であることも報告されている。麻酔の安全性を麻酔関連死亡という単純な指標だけで論じてよいのかという基本的疑問も呈されている。

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