書評
がんユニバーシティ—まるごと人間としての患者と,医者と,私
大塚 篤司
1
1近畿大学医学部皮膚科学教室
pp.966
発行日 2026年10月10日
Published Date 2026/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091713550360100966
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「がん」という現象の全体像が浮かび上がる書
市原真先生とは「SNS医療のカタチ」というグループで長く一緒に活動してきた。医療情報をやさしく伝えるにはどうすればいいか,イベントやSNSで試行錯誤を重ねてきた仲である。だから断言できるが,市原先生は私の知る限り日本で一番よく喋る病理医である。講演会の楽屋でも打ち上げの席でも,彼の話題が尽きるのを見たことがない。正直に白状すると,本書を手に取ったとき少しだけ心配になった。あれだけ喋る男に,聞き役が務まるのだろうか。心配は無用だった。本書の市原先生は,相手の言葉を面白がり,掘り下げ,話し手本人も自覚していなかった本音まで引き出していく。2年半かけて17名の「がんを見つめる人」に話を聞いてまとめ上げた本書は,いわば市原真の「聞く力」の集大成である。
『がんユニバーシティ』という書名のとおり,本書は大学の講義形式をとる。学長特別講義は生命科学者の仲野徹先生。以降,消化管内科医,外科医,腫瘍内科医といった臨床の最前線から,創薬研究者,放射線診断医,病理医,緩和ケア医,精神腫瘍科医まで,講師陣は実に多彩だ。さらにマギーズ東京の訪問看護師,両側乳がんを経験したテレビ局ディレクター,医療記事を書き続けてきた新聞記者と,医療者以外の視点も並ぶ。

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