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Key Questions
Q1:依存症の回復支援において,作業療法士はどのように生活や役割の再構築を促せるか?
Q2:不健康で社会的に認められない作業をどう捉え,支援するか?
Q3:依存症の新たな支援のかたちとはどのようなものか?
はじめに
近年,依存症(addiction)はアルコールや薬物にとどまらず,ギャンブルやゲーム,買い物,インターネット使用といった行動嗜癖へと関心が広がっている.これらの問題は,当事者の健康や生活だけでなく,家族や社会全体に大きな影響を及ぼすものとして,医療・福祉・司法の現場で取り上げられる機会が増えている.
5年ごとに発行される「作業療法白書」1)では,精神障害領域の作業療法における対象疾患として「アルコール依存症」は上位に挙がるものの,その比率は減少傾向(79.1%→54.2%→44.3%)にある.患者数が極端に減少しているわけではないため,各自治体で専門医療機関や治療拠点機関の選定が進む中,治療へのアクセスが改善される一方で,一部の医療機関へ対象者の偏在が生じている可能性も考えられる.精神科領域の中でも特別な疾患として扱われるがゆえに,難しい,面倒くさい,かかわりたくないと敬遠されがちになっていくことが懸念される.
本論では,①近年の依存症について概観したうえでリカバリーについて捉え,②国内外で報告されている作業療法支援をレビューしながら,③デジタルツールを活用した新たな取り組みについて述べていく.今回の特集が,専門医療機関はもちろんのこと,総合病院を含めた専門医療機関以外で勤務するセラピストにとっても,疾患への関心や“対峙してみよう”と小さな勇気を抱くきっかけとなれば,これほど嬉しいことはない.

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