Japanese
English
特集 中枢神経系の再構築
網膜の再構築
Reconstruction of neural retina
藤沢 肇
1
Hajime Fujisawa
1
1京都府立医科大学第2解剖学教室
pp.356-364
発行日 1984年10月15日
Published Date 1984/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904610
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組織や器官を形作っている細胞をばらばらに単離したのちに再構築させようとする試みは,このような解析を通して細胞による高次構造の形成のしくみを明らかにしようとする発生生物学的な発想に基づいて行われてきている。単離した細胞を再集合させることにより,もとの構造が再構築されることを最初に示したのはTownesとHoltfreter1)である。彼らはイモリの初期胚の内・中・外胚葉を構成している細胞を別々に単離したのちに混ぜ合わせて培養すると,最初は無差別に混り合っていたこれらの細胞が次第に分離し,ついには外胚葉細胞が外側に,内胚葉細胞が内側に位置し,これら2つの細胞群の間を中胚葉細胞がうめ,イモリ初期胚の基本的な立体構造が再構築されることを見出した。この実験以降,さまざまな組織,器官を対象にして再構築の実験が行われ,生物体が示す複雑な立体構造の形成(これを一般に形態形成morphogenesisと呼んでいる)が細胞同志の集合能や細胞選別能(cell sorting ability)に基づいておこることが明らかにされてきている。
一方,組織や器官の再構築の問題は傷害をうけた後の修復や,欠損した組織の補充あるいは機能回復など現実的,医学的な観点から最近注目をあびてきている。発生生物学的な発想によっておし進められてきた組織・器官の再構築の研究がそのまま医学的要請に応えられるような現状ではないが,今後ますますその重要性が増加するものと思われる。
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