オピニオン 精神科医にとっての精神療法の意味
個別性と普遍性
池田 暁史
1
1文教大学人間科学部臨床心理学科
pp.824-826
発行日 2013年9月15日
Published Date 2013/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102543
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主たる勤務先を医学部から臨床心理士養成を目的とした大学院に移して以降,精神医学についてあらためて学んだことや気付いたことがある。医学部時代はオムニバスで自分の専門領域についてだけ授業をしていたが,いまは精神医学について私が1人で全領域にわたって講義をする。毎年,最初の数回では医学という学問の歴史や考え方そのものにまで触れながら説明しなければならない。授業の準備をし,実際に学生に話をしていると,医学部時代には当たり前すぎて真剣に考慮することのなかったこの種の根源的な問題についてどうしても考えることになる。
そういう基本的な事柄の1つに「医学モデル」がある。それは,医学という学問が世界とどのように向き合うのかに関する概念化であり,「症状―診断―治療」という表現で端的に示されている。つまり私たちは「世界」――多くの場合,それは目の前の患者を意味する――から「症状」を抽出し,それらの特異的な組み合わせに対して「診断」を与えることで世界を切り取る。そして診断名に沿った「治療」を提供することで世界に介入するのである。
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