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Ⅰ.緒言・目的
近年,がん薬物療法の飛躍的な進歩は,がん患者の全生存期間の延長をもたらしている.一方で,がん薬物療法を受ける患者数の増加により,末梢静脈からの薬剤投与を必要とする機会も増加している.末梢静脈カテーテル(peripheral intravenous catheter;以下,PIVC)留置は侵襲的処置であり,初回PIVC留置の失敗は患者の身体的・精神的苦痛,医療従事者の業務負担,さらには医療経済的損失をもたらす1).
がん薬物療法においては,反復的な投与が必要となるため,PIVC留置処置の失敗による苦痛は一般輸液よりも深刻であると推察される.また,がん薬物療法に使用される薬の一部には壊死起因性・炎症性の性質をもつものもあり,血管外漏出(extravasation;以下,EV)の予防は極めて重要な臨床課題である2).実際,すべての薬剤を対象としたPIVCのトラブルについて,留置処置の繰り返しがEVのリスクを高める要因とされており3),特にがん薬物療法においてはPIVC留置の初回成功が患者の安全確保に直結する.
欧米では,PIVCを含む末梢アクセス型カテーテル留置困難症例(difficult intravenous access;以下,DIVA)に関する研究が進んでおり,手術室,救命救急センター,外科病棟などで使用可能な予測尺度も開発されている4)〜12).これらは,各医療現場でPIVC留置の初回成功率向上に寄与することが示唆されており,がん薬物療法への応用が期待される.
しかし,がん薬物療法には,一定の間隔で治療が繰り返されること,EV予防のための厳格なPIVC留置ルール2)が存在することなど,がん薬物療法に使用する以外の薬剤(以下,一般輸液)とは異なる点も多い.がん薬物療法に特化した予測尺度としては,Pagnutti 13)らが要因を探索的に報告しているにとどまり,汎用的なDIVA予測尺度の単純な応用には限界があると考えられる.さらに,日本においては,PIVC留置失敗の背景に「繁忙による焦り」や「患者からの重圧」といった,欧米にはみられない文化的・社会的要因が報告されており14)15),日本独自の予測尺度の必要性も示唆される.
以上より,EVによる皮膚障害リスクの軽減と,反復的な治療を受けるがん患者の苦痛緩和を目的に,がん薬物療法に特化したPIVC留置の困難性予測尺度の開発が必要とされる.まず,一般輸液に関する先行研究により明らかにされたPIVC留置の困難要因と,がん薬物療法における相違点・類似点を整理し,今後の予測尺度開発に資する候補項目の抽出を目指す.
本研究の目的は,がん薬物療法におけるPIVC留置の困難性の予測に向け,既存の一般輸液に関するDIVAの要因を明らかにした報告を基として,がん薬物療法特有の困難性を明確にし,予測尺度に含めるべき候補項目を検討することである.
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