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Ⅰ.はじめに
1986年WHOが「Cancer Pain Relief」を発刊し,がん疼痛治療の普及を目指してから,日本でもさまざまな学会でがん疼痛に関するテーマが取り上げられている.1999年には日本緩和医療学会から「がん疼痛治療ガイドライン」が発刊され,がん疼痛に関する診断と薬剤の方略などさまざまな側面からの取り組みがなされている.2007年4月施行のがん対策基本法では緩和ケアの推進が謳われ,医療者の緩和ケア教育の重要性が指摘されている.また,2010年4月からの診療報酬の改定により,がん患者に対する丁寧な説明の評価も開始されるなど緩和ケアが重要視され,がん疼痛を抱える患者に対する有効な疼痛緩和の援助が求められている.
小島1)のがん疼痛マネジメントに関する知識と困難の研究によると,看護師全体の98%が困難を感じている.久米ら2)は,がん患者の疼痛管理の妨害因子を調査し,よく疼痛を緩和できるとした看護師は8%にすぎず,薬剤についての知識不足やアセスメントの不適切さなど大学病院の看護師が疼痛管理の困難さを感じていることを指摘している.中橋3)は,看護師のがん疼痛コントロールに関する知識・態度・看護実践を比較し,がん専門病院・緩和ケア施設,大学病院,一般病院の順に知識などが高いこと,がん疼痛に携わる頻度により差異がみられることを報告している.
このように,がん疼痛を抱える患者の看護において,多くの看護師は困難を感じていることが判明していたが,具体的にどのような困難を抱えているのかについては十分に明らかにされてはいない.看護師が,がん疼痛を抱える患者を看護するうえで,どのような困難を感じているのかを具体的に把握することができれば,看護師が痛みのマネジメントをどのように認識しているのかが把握でき,看護実践における課題を明確にすることができる.がん疼痛を抱える患者の看護実践における課題を明らかにできれば,組織におけるシステムとしての解決策の方向性を見出すことにつながり,看護師にどのような教育支援を行うことが有効であるかの方略を見出すことが可能となる.
本研究の目的は,がん疼痛を抱える患者の看護実践において看護師が体験している困難の内容を明らかにすることである.
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