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背景と目的
脊髄癒着性くも膜症(spinal adhesive arachnoidopathy:SAA)は,くも膜における持続的な炎症反応を伴う慢性病態である.癒着性くも膜炎(adhesive arachnoiditis:AA)はSAAの主要な病態の1つであり,二次的な合併症を伴う22).さらに,くも膜下腔(subarachnoid space:SAS)-軟膜病変のdisease of leptomeninges(DLMs)という概念が提唱されている14).SAA(DLMs)は希少疾患とされてきたが,高齢化と脊椎手術の増加に伴い決してまれではなくなっている14,22).AAはくも膜と軟膜の癒着によりくも膜肥厚(まれに骨化)をきたし,脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)の流れが阻害される疾患群である19).原因には特発性(まれ)と続発性があり,後者には感染性や非感染性〔外傷後,手術後,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)後,造影剤などの化学物質など〕に大きく分類される19).臨床症状では神経根症状,神経障害性疼痛,脊髄症状がある22).それらは癒着の程度や病変の範囲(限局性,びまん性)によって異なる.限局性には外傷や手術後,Chiari奇形および医原性(硬膜外注入)などがある.びまん性にはSAHおよび感染性髄膜炎などがある22).AAの病態分類を理解するためには,脊髄髄膜と微小血(脈)管解剖の理解が最も重要である.高度びまん性AA例では病態が複雑であり,その治療方法に難渋しているのが現状である.本稿の目的は,既存の成書では理解困難なAAの理解を深めることであり,そのために各病態を脊髄レベル10)と馬尾レベル5)に分けてイラストを用いて微小解剖と病態生理について概説する.

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