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特集 軽症頸椎症性脊髄症の治療戦略
軽症頸椎症性脊髄症の治療戦略—安易に手術をしない立場から
Treatment Strategy on Mild Cervical Spondylotic Myelopathy: Against to the View of Prior or Easy Selection of Surgical Treatments
鷲見 正敏
1
Masatoshi SUMI
1
1真星病院整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Mahoshi Hospital
キーワード:
頸椎症
,
cervial spondylosis
,
脊髄症
,
myelopathy
,
natural course
Keyword:
頸椎症
,
cervial spondylosis
,
脊髄症
,
myelopathy
,
natural course
pp.401-408
発行日 2025年7月25日
Published Date 2025/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091444120380070401
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はじめに:「寝たきり」という脅し
「あなたの脊髄は圧迫されてぺっしゃんこになっています」「崖の端をふらふら歩いているようなもので,そのうち足を踏み外して谷底まで落ちてしまいますよ」「寝たきりですね」「とりかえしがつかなくなる前に手術を受けましょう」.
このような説明を受けて悩んでいる頸椎症性脊髄症(cervical spondylotic myelopathy:CSM)の患者は多い.特に,症状が軽くADLにさほど支障を感じていない患者にとって,この「忠告(脅し)」は深刻なものになっている.
確かに,CSMの中でも脊髄症の程度が強くADL障害を明らかに自覚している場合には,このような「忠告(脅し)」が正当と考えられる.脊髄が圧迫され,進行性かつ非可逆的に障害を受けているので,さらなる進行悪化を防止して症状改善を期するためにも,手術で圧迫を除去する必要がある.
ただ,上下肢にしびれがあり,手足の動きは多少ぎこちないが,生活にあまり支障を感じていない「軽症」例,つまり手術のことをあまり想定していなかった患者に,手術への強引な誘導が許容されるか否かについては議論の余地がある.「軽症」のCSM例が果たして「崖の下へ真っ逆さまに落ちる」ように悪化するのか,また「軽症」の症状が手術によって改善するのかなどについて検討する必要がある.
論を進めるにあたって,本稿における「頸椎症性脊髄症」と「軽症」の定義を明らかにしておく.

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