Japanese
English
特集 これだけは避けたい! 脊椎脊髄手術の重篤な合併症とその対策
胸椎OPLLに伴う脊髄障害
Spinal Cord Disorders Associated with Thoracic OPLL
伊藤 定之
1
,
中島 宏彰
1
,
世木 直喜
1
,
大内田 隼
1
,
今釜 史郎
1
Sadayuki ITO
1
,
Hiroaki NAKASHIMA
1
,
Naoki SEGI
1
,
Jun OUCHIDA
1
,
Shiro IMAGAMA
1
1名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学
1Department of Orthopedic Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine
キーワード:
胸椎後縦靭帯骨化症
,
thoracic ossification of the posterior longitudinal ligament
,
脊髄障害
,
spinal cord disorders
,
合併症
,
complication
Keyword:
胸椎後縦靭帯骨化症
,
thoracic ossification of the posterior longitudinal ligament
,
脊髄障害
,
spinal cord disorders
,
合併症
,
complication
pp.147-154
発行日 2025年2月25日
Published Date 2025/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091444120380030147
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はじめに
胸椎後縦靭帯骨化症(ossification of the posterior longitudinal ligament:OPLL)は,日本を含む東アジア地域で特に高頻度にみられる疾患であり,脊髄障害の主因となることが多い14).胸椎OPLLは,後縦靭帯が骨化することにより脊髄を圧迫し,運動麻痺,感覚障害,歩行障害といった重篤な症状を引き起こす.これらの症状は進行性であり,適切な時期に診断と治療を行うことが,患者の予後に直結する.
保存的治療が試みられることもあるが,進行性の脊髄圧迫に対しては外科的治療が必要であることが多い1).しかし,胸椎部の手術は技術的に困難であり,術後合併症の発生率が高いことが問題となっている.特に,術後麻痺や脊髄損傷といった重篤な合併症が懸念されており,合併症の発生率は報告によれば51.3%にも及ぶ7).
胸椎OPLLの外科的治療として,後方除圧固定術が有効であることが示されている6,12).術後の神経学的改善率は安定し向上している一方で,術前の脊髄圧迫の程度,病変数,手術侵襲の大きさが,術後合併症の発生に影響を及ぼすことが明らかとなっている6).さらに,術中神経モニタリングや脊髄浮上の有無が,合併症リスクの軽減に寄与することが報告されている7).
本稿では,胸椎OPLLによる脊髄障害に対する外科的治療の現状と課題について述べるとともに,術後合併症のリスク因子およびその対策について最新の知見をもとに考察する.

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