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はじめに
骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fracture:OVF)は,高齢化のため世界的に増加している公衆衛生上の課題である.脆弱性骨折であるOVFは高齢者に多く,65歳以上を対象とした本邦の健康保険請求および特定健康診断データベースを用いた研究では,2013〜2014年の骨折患者において41.2%が脆弱性骨折であり,性別・年齢層にかかわらず脊椎骨折が最多であった7).OVFの原因の1つである転倒は,65歳以上では30%が少なくとも年に1回経験するため,高齢者にとって日常生活上の問題であり,今や転倒・骨折,関節疾患など運動器疾患は要支援,要介護の原因のトップとなっている15).このように,転倒はADL障害をきたす高齢者の運動器疾患に直結していることから,健康寿命の延伸のために転倒予防はきわめて重要な課題である.
別の視点では,OVFは要介護状態へ直結する疾患であるだけでなく,骨折連鎖の入り口でもある.つまり,OVFの発生は脊椎だけでなく,股関節,橈骨遠位端骨折などほかの骨折リスクも高まっていることを示しており12),そのリスクは数倍〜十数倍と見積もられる.さらに,その後の骨折リスクは,最初の骨折の直後(およそ1年間)が最大である11,23).よって,OVF患者を対象とした二次・三次予防戦略として転倒予防対策は意義が大きい可能性が高い.加えて,骨粗鬆症性骨折の多くは個人にとって最初の骨折として発生する10)ため,一次予防戦略も重要である.したがって,OVFに対し,単純に骨折を治療するだけでは患者の全人的治療として不十分である.
骨折の治療のみならず,次の骨折を防ぎ,健康寿命を維持することが重要な課題であり,このためには多職種が連携し,外科的治療,骨粗鬆症治療を含めた医師による管理,ADLの維持向上のためのリハビリテーション,患者の生活に密着した管理を可能とする地域連携を統合する必要がある.医師の視点からは,OVFの診断,重症度判定(偽関節リスク予測),疼痛管理,骨粗鬆症薬物療法などがある.理学療法士,看護師などコメディカルの視点からは,廃用予防のための早期離床,転倒リスク評価,具体的な運動プログラムの立案と安全な実施が提供される.地域連携の視点からは,退院後の継続した薬物療法や運動療法のフォローが可能である.骨粗鬆症マネージャーの活用も挙げられよう.
本稿では,これら転倒予防,理学療法,地域連携などについて,われわれが地域住民コホート研究「Yakumo study」から明らかにしてきた姿勢,重心動揺,歩行などに関する知見をまとめ,中高年者の転倒リスクに関連し得る疫学データについて考察する.また,運動療法や地域連携については関連する事項について概説する.

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