椎体形成術における血管内セメント漏出

Intravascular Cement Leakage after Ballon Kyphoplasty and Percutaneous Vertebroplasty

はじめに

　椎体形成術は，骨粗鬆症性椎体骨折（osteoporotic vertebral fracture：OVF）や溶骨性脊椎腫瘍に対して，椎体安定効果と即時的除痛効果を有する低侵襲手術であり，高齢者や担がん患者などにも適応可能で，早期離床やADL改善が期待できる点が特長である^11）．さらには近年，OVF受傷後数週以内の早期椎体形成術によって，より良好な除痛効果やADL改善が得られることが報告されており，手術成績向上への試みは続いている^7,25）．一方で，椎体形成術における重篤な術後合併症の1つが椎体外セメント漏出であり，特に血管内への漏出は，肺塞栓などの深刻な塞栓症につながる危険性が指摘されている^31）．さらには，椎体から硬膜外腔への血管を介したセメント漏出による神経学的合併症リスクにも注意する必要がある^27）．

　本稿では，椎体形成術における椎体外セメント漏出の発生率に始まり，血管内セメント漏出の発生機序，リスク因子，臨床像，診断方法，予防策，そして発生後の治療に関して文献的考察を行う．OVFや溶骨性脊椎腫瘍は超高齢社会において日常臨床で遭遇する頻度の高い疾患であり，椎体形成術で重篤な合併症になり得る血管内セメント漏出に関して，その病態と対策を理解することは椎体形成術の治療成績向上と患者の安全性確保のためにきわめて重要である．