精神障害者の就労・復職支援の歴史的変遷と国際的動向

Historical Changes and International Trends in Support for Employment and Return to Work for Psychiatric Patients

抄録

　精神障害者の就労支援について，日本では，統合失調症をはじめとした内因性障害に対して，医療者，家族，さらには地域の篤志家などによる支援がほそぼそと続く時代が長かった。障害者に関する国際的な権利条約などの批准を契機に，20世紀末からさまざまな法や支援機関の整備が進み，精神障害者の就労実数も増加してきている。本稿では障害者就労に関係する重要な法制度の変遷について説明し，それをふまえて精神障害者の就労支援の基盤となる考え方の流れを概括した。次いで，すでに就労していた労働者が精神障害を発症し休職を余儀なくされた後の復職支援について，近年の動向を簡単にまとめた。近年，職場ストレスに起因して発症し休職した労働者に対する復職支援プログラム（リワーク）に注目が集まり，そのエビデンスが集積されつつある。併せて復職支援に対する国際的な動向を，日本のそれとの差異に注目しつつ解説する。