精神障害者の就労・復職支援の現状と課題，解決に向けたアプローチ

The Current State and Issues of Employment Reintegration Support for People with Mental Disorders: Approach to Solving the Problem

抄録

　日本における勤労者が精神障害を経験する割合は約20%である。すなわち5人に1人に精神障害がみられる。具体的な精神疾患の種類は，気分症（うつ病や双極症），不安症，睡眠障害などが多い。公的機関や民間企業における障害者全体の雇用数の中で，精神障害者の割合も拡大している。特に公的機関では，精神障害者の実雇用率が増加しており，民間企業でも障害者雇用の法定雇用率を達成している企業の割合が増えている。しかし，精神障害者の就労や復職には多くの困難や課題がある。精神障害者が社会で自立し，充実した生活を送るためには，職場での適切な就労支援や環境整備が必要不可欠である。精神障害者の就労・復職支援は，今も多くの課題が残されており，これらの解決には新しい視点・発想や技術の活用が求められている。本稿では，現状の課題を整理し，そしてAI活用や行動経済学的アプローチ，自動車運転問題，服薬治療や通院継続しながらの復職，両立支援，健康経営などの観点から支援の方向性を論じる。