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はじめに
Mini-Mental State Examination(MMSE)は,Folsteinら1)によって,もともとは精神疾患のなかで認知障害を有する患者を検出することを目的として考案されたものである.1975年の原版におけるMMSEは30点満点で,健常高齢者の平均得点は27.6±1.7点であり,同一検査者による1日後の再検査信頼性係数は0.887,比較的安定した臨床群の28日後の再検査信頼性係数は0.988である.MMSEのWechsler Adult Intelligence Scale(WAIS)との併存的妥当性(Pearson積率相関係数)は,言語性知能指数(Verbal Intelligence Quotient:VIQ)が0.776,動作性知能指数(Performance IQ:PIQ)が0.660とされている.また,認知障害ありとなしを区別するカットオフ値は20/21点が採用されており,総得点が20点以下の者は,認知症,せん妄,統合失調症,感情障害の可能性が高いが,健常者,神経症,パーソナリティ症の者で20点以下のことはまれであるとされている.
この検査は実施が容易なことや臨床的有用性の高さから,その後,神経疾患や一般内科疾患,ならびに認知症疾患の認知機能のテストとして,広く欧米で用いられてきている.なお,これまでにMMSEは教育歴の影響を受けることが指摘されており2),大学卒業以上の者の場合,カットオフ値を26/27点としたほうが判別精度がよいとする報告もある3).
また,Folsteinら1)は,もともとのMMSEの検査項目をorientation(見当識),registration(記銘),attention and calculation(注意と計算),recall(再生),language(言語)の5つのカテゴリーに任意分類している.その後,Jonesら4)により58〜98歳までの在宅高齢者8,556名を対象とし,MMSE全項目間の四分相関行列をもとに因子分析(プロマックス法による斜交回転)による構成概念的妥当性が検証され,concentration(集中),language and praxis(言語と行為),orientation(見当識),memory(記憶),attention(注意)が抽出され,Folsteinら1)のカテゴリー構造を支持すると報告されている.
さらに,山中ら5)によりアルツハイマー病(probable Alzheimer's Disease:probable AD)者78名を対象とし,MMSE全30項目中,再生の3単語目と市の見当識を除外した28項目について同様の方法で因子分析による構成概念的妥当性が検証された.作動記憶,直接記憶,意味理解,視空間イメージ・処理,見当識(学習の機会小),(口頭命令による)単一処理,近時記憶,見当識(学習の機会大)の8つの因子が抽出され,その理由として在宅高齢者(≒健常者)では統合されていた認知機能も,AD者ではいくつかに分化するため,あるいは健常者にはみられない機能を反映しているためと考えられると報告されている.
そこで本稿では,これまでの日本語版MMSEについて,また新たに標準化された精神状態短時間検査-日本版(Mini-Mental State Examination-Japanese:MMSE-J)について述べたうえで,実施や解釈に役立つポイントについて述べる.

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