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はじめに
老齢人口の増加に伴い認知症患者が著しく増加し,病院,施設,地域における高齢者の相談,治療,看護やケアを行う機会が多くなってきている.認知症は,知的低下だけでなく,日常生活活動,精神症状,行動異常,身体症状などに多彩な症状を示し,その対応は,家庭,病院,施設でも苦慮する.そのため,認知症の早期発見,適切な治療やケアが必要である.特に,老人保健,医療,福祉領域では,簡便で的確に知的機能の低下の有無とその程度を評価することが求められる.
認知症の原因は1つではない.食事の摂り方,運動不足,喫煙,飲酒,生活習慣病,転倒による頭部打撲,配偶者や家族の突然の死など,さまざまな要因がある.そのため,① 日常生活活動(activities of daily living;ADL),② 手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living;IADL),③ 認知機能,④ 行動異常,⑤ 気分(うつ状態,不安,意欲低下),⑥ 身体機能,⑦ 人的環境(家族,友人),⑧ 物理的環境・経済的環境など,認知症が疑われる原因を調査する必要がある.⑤ の気分では,うつ状態(やる気が出ない,関心がない,集中できない,悲観的である)など精神的な落ち込みが原因で,忘れっぽくなり日常生活のミスが多くなったり,閉じこもりがちになったり,認知症と間違われることもある.抗うつ治療によりうつ状態がよくなると改善することがある.
また,認知症は単なる記憶障害の問題ではなく,どのような状況判断をする傾向があるかを検査の誤反応で明確にする前頭葉機能のチェックも必要である.
第1回では,③ の認知機能を測る検査として,認知症の代表的なスクリーニング検査であるMini-Mental State Examination(MMSE)1)と改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Revised Hasegawa Dementia Scale;HDS-R)2)について解説していく.
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