リハビリテーション科医師に必要な診察,評価手技
6.認知機能(MMSE,HDS-R)
荒川 英樹
1
1宮崎大学医学部リハビリテーション科
キーワード:
認知機能
,
神経心理学的検査
,
MMSE
,
HDS-R
,
認知症
Keyword:
認知機能
,
神経心理学的検査
,
MMSE
,
HDS-R
,
認知症
pp.901-906
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr033090901
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はじめに
リハビリテーション科医として認知機能を評価する機会は多い.認知症や神経疾患ではもちろんであるが,運動器疾患や内科疾患であっても,リハビリテーション診療の基本である生活や活動に関する問診,身体診察に際して,「あれ? もしかして……」と感じる場面には日常的に遭遇する.本人だけでなく家族や主治医も気づいていない場合もある.認知症とは認知機能が低下する疾患の総称であり,アルツハイマー型認知症,レビー小体型認知症,血管性認知症等があるが,その他の併存疾患による症状の可能性も十分に考慮する必要がある.認知症の進行を抑制するためには早期発見が重要である.現在,多くの認知症において,根本的な治療法の開発・研究は途上であるが,適切な早期診断による投薬やリハビリテーション治療がその進行を遅らせる可能性は十分に示されている.
認知機能の診察においては,患者の前向きな協力を得ることが不可欠である.そのため,意識状態や全般的な注意の状態,情動の状態,体調や疲労感等をしっかりと確認する必要がある.主訴や病歴,生活歴,運動機能等を問診,診察しながら,そのときの状態を細かく観察し全体像を把握する.意識状態が明らかに低下している場合に,認知機能を正確に評価することはできない.声かけですぐに開眼する程度,軽度の意識障害であっても,注意を向けることのできる範囲が狭く周囲に無関心であったり,注意の持続が難しく会話,記銘,書字や計算に影響する場合も多い.また,情動の影響として,うつ状態では認知機能検査で軽度の低下を示すことも報告されている 1).そのため, 患者の心身の状態が適したタイミングで行うことが望ましい.
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